2016年度 第73回宗教法学会 秋季シンポジウム :: ARL: 宗教法学会

2016年度 第73回宗教法学会 秋季シンポジウム

image_pdf

「墓地提供という公役務と信教の自由」

 

 

【企画の趣旨及び概要】

墓地埋葬法制に関して、わが国では、「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)が存在し、埋葬・火葬の許可制、墓地経営の許可制などを定めている。しかし、同法を中心とした従来のわが国の墓地埋葬法制については、次のような問題点がある。

第一に、墓地の設置主体は地方公共団体が原則であるにもかかわらず、現実には多くの墓地が主として宗教法人等によって経営されており、墓地の提供等が、本来、公役務であるという認識は極めて薄い。諸外国では、墓地の提供などが公役務の一種と理解され、その公共性・公益性が墓地法制の基礎にあることが指摘されている。それゆえ、墓地提供が公役務であるということがいかなる意味を持つのかを明らかにしたうえで、わが国においても墓地の提供等が公役務であり、地方公共団体の責務であることを再確認する必要がある。

第二に、そもそも葬送は、個人の幸福追求や宗教的信念とも密接に関連する問題であり、したがって、墓地提供等の公役務は、信教の自由や「葬送の自由」(憲法13条)の保障を実質化するために不可欠であり、また、その保障に資するものでなければならない。しかしながら、墓地埋葬法は、個人の死生観や葬送・埋葬の方法が多様化した現代においても伝統的な埋葬方法しか予定していない。墓地提供等の公役務は、多様化した葬送・埋葬に対応し、個人の幸福追求や信教の自由の積極的な実現を図るものでなければならないのである。

第三に、墓地埋葬法制は、土葬を基本とする葬送様式を前提として公衆衛生上の見地から定められたが、火葬がほとんどを占める現在では、それを公衆衛生法規としてのみ位置づけることは困難である。墓地埋葬法は、今日まで実務上、厚生労働省所管の衛生法規の一環として位置づけられ、伝統的な学説も同様に解している。しかし、墓地のあり方は、例えば宗教的感情の保護、景観・都市計画など公衆衛生以外の多様な利益と密接に関係しており、今日では墓地の設置等の公役務の遂行に当たっては、むしろ、そうした利益との調整が重要になってきているのである。

以上のような問題点を考えると、墓地の提供を地方公共団体の公役務と捉え直したうえで、一方では、墓地の提供が個人の自由の実現にかかわるものであることを踏まえ、他方では、今日、信教の自由や葬送の自由との調整を要する利益は公衆衛生だけでなく、都市計画・環境保護といった利益との調整も求められていることを考慮しつつ、この公役務がどうあるべきかを再検討することが必要である。

 

 

 

【スケジュール】

日  程: 2016年11月5日(土) 於:愛媛大学

全体司会: 嘉多山 宗(弁護士)

 

理事長挨拶 (10:00~10:05)

<報 告>

10:05~10:45

墓と埋葬を巡る法的問題――<家>なき時代の墓地埋葬法の構築に向けて

森 謙二(茨城キリスト教大学)

10:45~11:25

フランスの墓地埋葬法制――公法的観点から

大石 眞(京都大学)

11:25~12:05

イタリアの墓地埋葬法制

田近 肇(近畿大学)

12:05~13:40 <休憩及び総会>

 

13:40~14:20

ドイツ・オーストリアの墓地埋葬と憲法

片桐 直人(大阪大学)

14:20~15:00

ドイツにおける墓地の「公共性」――行政法的観点を中心としてから

重本 達哉(大阪市立大学)

15:00~15:40

日本の墓地埋葬法制――課題と展望

竹内康博(愛媛大学)

15:40~16:00 <休憩>

16:00~17:00

パネル・ディスカッション

 

パネル・ディスカッション終了後に懇親会を行います。

レジュメなどはこちらからDLしてください。
%e7%ac%ac73%e5%9b%9e%e3%83%ac%e3%82%b8%e3%83%a5%e3%83%a1%e4%bb%96

Top